そのアパートは、とある郊外の街のはずれにあった。
建物の背後にはちょっとした雑木林があり、その先はすぐ緑豊かな丘になっている。
立地のせいもあって、日当たりには少々問題があったし、駅までも遠かったけれど、その分、こじゃれた見た目の割には家賃が安かった。
僕が進学の時、敢えて不便さには目を瞑ってその物件を選んだのは、その家賃故だった。
けれど、入居日から1週間が過ぎた時点で、僕は早々に後悔していた。
他の部屋からの騒音がひどかったからだ。
部屋でドタドタ筋トレする奴から大声を出す奴までより取り見取り。
下宿をするのははじめてだったから一般的なアパートの騒音がどの程度のものかはわからなかったが、これはない。
安いには安いなりの理由があると思ったものだ。
とはいえ、敷金も礼金も払ってしまった後だったし、即引き払うほどのお金の余裕はなかった。
それに、うるさささえ我慢すれば、それ以外の問題があるわけでもない。
部屋は広いし、築年数の割には綺麗だった。
なにより、引っ越したとしても、またハズレ物件を引かない保証はどこにもないのだ。
結局、1年は住んでみようと割り切った。
夜の営みは精液垂れ流し…騒音だらけのアパートで見た壮絶性交
そんな迷惑極まりないアパートの騒音だったが、ある部屋からの騒音だけは少し毛色が違った。
僕の部屋は2階だったが、そのすぐ真下の部屋からの音だ。
それは、男女がセックスする声だった。
だいたい毎日、聞こえてくるのだが、これが激しい。
声が大きすぎて、床の防音機能がまったく意味をなしていなかった。
我を忘れたような女の喘ぎ声が大音量で床を突き抜けて部屋まで届くので、その間は作業が手につかなかった。
その頃まだ童貞だった僕には刺激が強すぎたのだ。
ただ、もちろん迷惑には変わりなかったけれど、なにしろエロい。
最初からボルテージが高い女の声が、どんどん熱を帯びていき、徐々にかすれ、キーンと音を引く叫びを最後に上げて急に途切れるまでの流れは、セックスの流れを童貞にもありありと想像させるものだった。
2週間目には、その女の声はすっかり僕の定番のズリネタになっていた。
エロ動画にかける金が浮いたと思えば、そう悪くない。
もちろん、あれだけ大きな声だと苦情がいかないんだろうかと他人事ながら心配になったこともあった。
けれど、セックスの声が聞こえてくるのは長くても1時間半程度。それに、日によって時間の差はあれ、夜9時を回って聞こえてくることはない。
一応深夜帯のマナーは守っているようだった。
0時頃まで延々と続く他の部屋の騒音に比べればまだはるかにマシだったのだ。
それに、こんなアパートに敢えて住み続けている以上、住人ももう騒音には慣れっこのはずで、その部屋のカップルが悪目立ちすることもなかったんだと思う。
さて、毎日ズリネタにしていると、その声の主にも興味が出てくるものだ。
いったいどんな女があんないやらしい声を上げているんだろう。
童貞の興味は高まる一方だったが、それはあっさりわかった。
毎日外出して帰宅する流れを繰り返していれば、気をつけていれば住人の顔の判別はつくようになってくるし、部屋に入っていく姿も目にする。
その部屋に住んでいる男女も、すぐに特定できた。
少し背の低いがっちりした男と、ほっそりした背の高い女。
女性の方は、切れ長で鋭い目をしていたが、その割にみるからに優しそうな雰囲気の美女だった。
今時珍しい真っ黒なセミロングの髪型。
ロングスカートをよく履いていて、それが長身のスタイルによく似合っていた。
歳はわからないが、多分、その当時の僕より少し年上くらいだっただろうと思う。
もちろん、それだけなら男女という事以上はわからないが、その2人がセックスしているのは間違いなかった。
部屋に入っていくのを横目に見ながら僕も自室に戻ると、すぐにあの声が聞こえはじめることも少なくなかったからだ。
お盛んなことだが、こちらとしては確信が持てるし、生々しいイメージがありありと想像できるからありがたい。
あんな人が、あんなやらしい声を上げているのか。
そう思うと、オナニーする手にも熱がこもったし、相手の男が羨ましくて仕方なかった。
ただ、女性の容姿とは別に、決定的に僕の興奮を高めたのは、そのカップルのおよそ正常とは言い難い関係性だった。
それを知ったのは、ある日の最寄り駅でのことだ。
アパートに入居してから3ヵ月ほど経った夕方のことだった。
いつものように学校から電車に乗り、最寄り駅まで着いた時、僕は人込みのすぐ前方に、見覚えのある2人を見かけた。
いうまでもなくあのカップルだ。
二人でどこかに出かけた帰りだったんだろう。
どんな用事だったかはわからないが、いかにも仲良さげに二人は話しながらホームを歩いていた。
もともとそんなに距離がなかったため、人の流れに従っているうち、いつの間にか僕は自然に、二人のすぐ後ろをついていく形になった。
間に人がひとりふたりくらいはいたけれど、話している声は十分聞き取れる距離。
女性と男性の楽し気な話し声ももちろん聞き取れたのだが、その時僕は耳を疑った。
男性が、女性を「姉ちゃん」と呼んだのだ。
…姉ちゃん?
聞き間違えかと思ったが、つい耳をそば立ててみれば、話題もどうやら実家の親御さんたちのことのようだった。
細かい話の流れこそわからないものの、「父さん母さんがどうした」といった、家族でしか交わさない、知りようのない会話だ。
しかも、ご丁寧になんども「姉ちゃん」と繰り返すのだから、空耳でないことだけは確信できる。
ということは…
こいつら、姉弟で同居するだけじゃなく、ヤってるのかよ。
駅の改札を出て、僕は立ち止まり、アパートの方向に歩いていく二人の後ろ姿をしばらく見送った。
あんな事実を知ってしまった後で、後ろをついていくのはどうも具合が悪い。
近親相姦なんて架空のものだと思っていた僕だったが、いるところにはいるものだ。
胸がどきどきしていた。
驚きはもちろん大きかったが、それ以上にあまりに不道徳な彼らの関係性そのものに、僕は性的に興奮していたのだ。
カバンで隠したが、僕のズボンの前は、勃起によってくっきりと膨れ上がっていた。
すっかり興味を彼らにもっていかれた僕は、その後しばらく、猿のように自慰をして過ごした。
あれほどオナニーに没頭したことは、思春期の頃でさえなかったと思う。
すっかりのぼせ上った僕が、やがて声だけでは満足できなくなるのは自然のなりゆきだった。
そんな僕の欲望を受け止めるかのように、階下の二人は無防備だった。
夏が近づくにつれ、彼らは雨戸はおろか、窓さえ開けっぱなしでセックスに興じるようになってきたのだ。
冷房を使わない主義なのか、単なる換気のつもりだったのかはわからないが、いずれにしてもあの声を聞かれているという意識がないのは確かだった。
なにしろ、声を抑える様子さえなかったのだから。
よりはっきり聞こえるようになった声は異常に性欲を煽るとともに、僕に決心をつけさせた。
彼らのセックスを、直接この目で覗いてみたい。
そして、部屋の中が見えるのであれば、このアパートはこと覗きに関してはおあつらえ向けだった。
何しろ、アパートの窓側は、塀を挟んで視界の悪い雑木林。
すぐに丘への傾斜が始まる立地からわかるように、歩道として使われる類のものではなく、荒れ果てていて整備もされていない。
アパート側から見れば夜は真っ暗闇で、多少距離を取ってしまえば、よほど注意していない限りは人影の判別などできない。
逆に、覗く側からすれば、雨戸さえ開いていれば部屋の中の様子は丸見えだ。
早速僕は、その計画を実行に移した。
次の日、僕は授業がおわると夕方早めに家に帰った。
そして、日が暮れるまで待った。
階下からは、セックスどころか物音ひとつしない。多分、外出しているんだろう。
それなら、このあとまず間違いなくセックスが始まるはずだ。
先にも書いたが、数ヶ月間、声が聞こえない日はほとんどなかったのだから。
それを確認してから、僕は外に出た。
そのまま建物の裏手に回り、こっそり塀を乗り越えて雑木林に身を潜めた。
夏が近づいているとはいえ既に薄暗くなっていて、林の中はほとんど視界が効かない。
見とがめられないかヒヤヒヤしたが、これなら大丈夫だろう。
問題の部屋は、留守のようでガラス窓こそ閉まっていたが、雨戸は開けっ放しだった。
おそらく、いちいち閉めるのも面倒くさいんだろう。
第一条件はクリア。
あとは二人が狙い通り、このままセックスをはじめてくれるかどうかだけだ。
ジリジリしながら1時間ほど待っただろうか。
問題の部屋に、明かりがついた。
カーテンが引かれ、ガラス窓が開く。
窓枠のシルエットの中に、あの女性が浮かび上がった。
部屋の明かりが後光のように見えた。
踵を返し、部屋の中で何かごそごそやり始めた。
さいわいなことに、カーテンを閉める様子はない。
それに、多少遠目になってしまうかと思っていたが、いざ覗いてみると、意外に窓までの距離はそんなにないようで、部屋の中は間近にはっきりと見えた。
暗闇の中、切り取られたように浮き上がった窓枠の中で、彼女が服を脱ぎ始めた。
ブラウスを脱ぎ、水色のキャミソールを脱ぎ、スカートも下ろした。
それから、同じように水色のブラとパンティを脱ぎ捨てる。
何の準備をしているのかは、おおよそ予想がついた。
多分シャワーじゃない。おそらく、シャワーを浴びる前に、彼らは始めるだろう。何故か、確信を持って僕はそう思った。
予想は、当たった。
部屋の影から、あの背の低い、たくましい男が現れたかと思うと、彼女を押し倒し、そのまま正常位で始めた。
そこまで見るのが難しいとは思っていなかったが、思った以上にあっけない展開だった。
少し焼けた男の尻が、白い彼女の股の間で激しく動いている。
ほどなく、部屋で何度となく聞いた、あの声が響き渡り始めた。
ベッドの位置がたまたまよかったようで、セックスの様子を伺うのに支障はなかった。
その光景は、見たままだけについて言うなら、期待していたほどではなかった。
男の身体で遮られて、肝心の女性の様子はほとんど見えないからだ。
ただ、男が身体を動かすたびに、突き出た女性の白い両脚がひくっと震え、時折浮き上がっては虚しく宙で踊る。
それにいちいちタイミングを合わせて甲高い喘ぎ声が上がった。
男の背に回された女性の手に力がこもるのが、離れていても見て取れた。
見事に、男の動きと女性の反応が連動している。
よほど男が上手いのか、それはわからないが、女性の感じる反応だけはみていて異様に生々しかった。
覗いているという後ろめたさもあったせいか、その光景は、見た目の地味さ以上に目を惹きつけた。
僕は緊張しながらも目を見開いて、しばしその光景に見入った。
やがて、激しくうごいていた男の尻が止まったかと思うと、ひと際高い叫びが上がった。
おそらく絶頂に達したのだろう。
そのまま、ふたりともしばらく動かなかった。
ただ、男の尻が時折かすかに揺れていたのは、おそらく精液を流し込んでいるんだろうということは想像がついた。
ややあって、男がペニスを抜いたのだろう、すこし身体を動かし、手を横に伸ばした。
女性が半身を起こして、上気した顔が見えた。
男に向かって、うっすらと笑みを浮かべている。
すっかり口元をゆるませた表情は、アパートの外でときおり見かけていたあの優しそうな、整った顔とはかけ離れたものだった。
そのまま、四つん這いになった。こちらからみれば、尻を突き出した格好。
間髪も入れずに、そのままバックで始めるつもりなのだろうか。
半分呆れてその光景を見守っていると、男はどうやらゴムを付け直したらしく、そのまま後ろから女性にのしかかった。
ただ、その構えた体勢が、僕には最初疑問だった。
すこし、性器の位置とズレすぎてないか…?
だが、男が腰を振り始めた時、僕は彼らが何をしているかに気づき、あっけにとられた。
男は、今度は両脚の太ももを大きく開いて、上から突き込んでいる。
その太ももの間に、今度はハッキリと、女性の性器が見えていた。
白い粘液を噴き出す性器が。
最初から、性器に入っていない。
身体の位置からして、男は女性のアナルに突っ込んでいるようなのだ。
実の肉親とやるだけでも問題なのに、どうやら彼らはそれに飽きたらず、アナルファックに及んでいるらしい。
尻穴ということもあるのか、男の動きはさっきまでよりは緩やかだった。
ただ、それはあくまでさっきまでに比べればという話。
そして、身体の動きに合わせて、白い粘液が女性の性器からドクドクと漏れだし、周囲に飛び散っている。
どうやら、その粘液は中出しされた精液のようだった。
どうやら、さきほどの正常位で、弟は姉に対して中出ししたらしい。
その糞度胸には、童貞学生の僕でも驚き呆れるしかなかった。あるいは、何も考えていなかったのか。
アナルファックにまで及ぶことを考えれば後者の可能性の方が高いかもしれないが。
いずれにせよ、彼らがすっかりセックスに溺れ、自分たちの状況を忘れていることだけは間違いなかった。
そして、僕がそんな彼らの痴情にすっかり意識を奪われていることも。
眼前のあまりに非常識な光景に、僕はすっかり毒気を抜かれ、口をぽかんと開けて見入った。
彼らが再び動きをとめ、女性の手が絶頂の叫びとともに再び宙を切るまで。
余韻にひたったあと、二人が身体を離すまで。
ペニスを抜かれた、すっかりふやけた尻の穴までを、僕はすっかりその目に焼き付けた。
やがて、窓の向こうの明かりが消え、真っ暗闇になったのを見計らい、僕は雑木林を離れた。
自室に戻ったら、一気に全身がかゆくなってきた。
考えてみれば当たり前だが、どうやら蚊に噛まれまくってしまったらしい。
掻きむしったわけでもないのに、腕がすっかり赤くなっていたし、鏡に映した顔は悲惨なものだった。
それに気が付かないほど、階下の光景に夢中になっていたのだ。
彼ら姉弟のセックスを直接見たのは、この一度きりだった。
その後のオナニーでは、声だけでもあの光景がありありと頭に浮かぶので刺激は十分だった。
さらに言えば、それからほどなく、彼らは引越して行ってしまった。
秋に入るころだったが、引っ越しシーズンは明らかに外した時期だったから、もしかしたら彼らの関係が誰かにバレるかしたのかもしれない。
…たとえば、彼らの親とかに。
もっとも、実際にどうだったのかは、僕には知るすべはなかった。
結局最後まで、面識らしい面識もなかったのだから。
いずれにせよ、僕が言えることは、その後鑑賞したどんなAVよりも彼らの姿がエロかったという、それだけだ。
あれから10年たつが、あの見知らぬ姉弟が見せつけてくれたあられもない光景は、僕にとってこの上ないズリネタになっている。